地元で人気の隠れた名店です。
小学生の頃から連れられて来ていて、友達同士でも中学、高校、今でも来ます。
50年以上やってるらしく、年齢不詳の元気なおっちゃんおばちゃんがいます。
焼きそば。確か500円ぐらい。量もしっかりありますよ。
これは牛すじとイカのお好み焼き。たぶんこれでも600~700円と思う。
豚平焼き。よくある卵と豚だけのしょぼーいのじゃないの。がっつりしてるの。ほんで確か450円なの。
ねぎ焼き。このまま醤油味で食べたらパリっとしておいしいの。
ここは基本おっちゃんが焼いて、おばちゃんが運んだり注文受けたりするんですが、おばちゃんも大変なので、常連さん達はみんな自分でビールを取って、「おばちゃんビールもらったから書いとくでー」と、注文のメモのところに書きます。場合によっては別のお客さんにも運んでくれたりします。そういうアットホームな雰囲気で成り立ってるすごい店です。
おばちゃんは恐ろしく高い声でしゃべります。7オクターブの声域を持つ「空掘のマライア・キャリー」です。
で、行ったのはこないだの日曜日。ちょうど大相撲の優勝決定戦がやってる時間でした。テレビがあって、僕らのほかに常連さんが2人ぐらい。みんなテレビを見てます。
朝青龍 vs 白鵬 一戦目。
おばちゃんも好きなんでしょう。ここは手を止め、席に座って勝負を待ちます。国技館も盛り上がってるようです。だんだん緊張感が高まります。
さあ、いよいよ・・・
始まった! 両者組み合う!
その瞬間
ガラガラガラ・・・
お客さんが入ってきました。おばちゃんが行かなくてはなりません。立ち上がってお客さんの元へ行った頃、勝負が決まっていました。
その瞬間を見れなかったおばちゃんが残念そうに戻ってきます。
しかし、まだもう一回あるというではないですか。まだ優勝は決まっていないのです。ああ、よかった。おばちゃん、見れるね。
しばらくして、また国技館が盛り上がってきました。
朝青龍 vs 白鵬 二戦目。
さあ、おばちゃんも今度はばっちり、席に座り本当に最後の優勝決定の瞬間を見逃さまいと鋭い目つきで見守ります。
そして、さあいよいよ始まる・・・!
プルルルルルル・・・・・
電話です。店じゅうにひびく「ことみ」への電話です。
そしてそれを出るのは、おなじみ「空掘のマライア・キャリー」です。
店の全員が「またおばちゃん見れないのか?」と思って、おばちゃんを見た時・・・
おばちゃん、電話を見て一瞬考えました。
完全に「出ない」という選択肢と戦っていました。
でも、もちろん出ないわけにもいかず、電話の元へ行ったときに勝負は始まり・・・
テレビが完全に見えない場所で、おばちゃんはその歴史的瞬間を迎えました。
電話が終わり、戻ってきたおばちゃんは、負けた白鵬より沈んでいました。