ちょうど20年前、伝説になった大会を改めて見ました。もちろん「新日本プロレスワールド」で。
1995年10月9日 東京ドーム 観衆6万7000人(超満員札止め)
新日本プロレスワールド『激突!!新日本プロレス対UWFインターナショナル全面戦争』全試合
当時は闘魂三銃士を中心に新日本プロレスファンで、UWFというものをよくわかってなかった中学生でした。年上の超プロレスファンの人はこのカード発表された時は大騒ぎしてました。武藤と高田やで!って。その頃はそんなすごいとも思わずなんとなくで見たんですが、後々いろいろ知った後に見返したらより楽しめた、自分の年代的にはそういう興行でした。単純に東京ドーム67000人ってものすごいですよね。
山崎一夫の新日移籍を発端に揉めて対抗戦に。2週ぐらい前に横浜アリーナで長州&永田vs安生&中野が組まれ、永田と安生が顔面壊れながらの喧嘩近い試合で対抗戦ムードが完全に高まっての当日。
第1試合 ○石沢常光、永田裕志(三角絞め 10:47)金原弘光、桜庭和志●
後にケンドー・カ・シンになる石沢、新日本を守るエースになる永田、リングスで活躍する金原、6年後同じ東京ドームでホイス・グレイシーと戦い格闘技界のレジェンドになる桜庭。そして金原がキックパンツと裸足で来るっていう、トップバッターで早速「プロレスをやりに来たんじゃないぞ」って意思表示に見えていいですね。それに怒る永田も。対抗戦の雰囲気と異種格闘技的な緊張感。Uインター勢の打撃の威力は?新日本勢の投げの威力は?そんなことを見極めようと見入る観客。永田の強引なジャーマンは良かった。
第2試合 ○大谷晋二郎(羽根折り腕固め 7:18)山本喧一●
後にゼロワンを引っ張り支援や慰問で社会に響く形でプロレスを広げていく大谷、PRIDE参戦から素人出場者とのガチ試合で独自のMMA路線を行くことになる山本。怖い表情の大谷と、体バキバキの山本で高まる緊張感。最初のタックルから猪木みたいに握り拳作ったシーンなんかはもう見せ方完璧!会場がドっと沸きます。さすが大谷。山本も受け良く表情良く見劣りせず。大谷は顔踏んだりプロレスらしいエグさを出していきます。「強すぎる大谷」雰囲気で終えました。
第3試合 ●飯塚高史(腕ひしぎ逆十字固め 7:39)高山善廣○
超正統派レスラーから、後に来る新日復活黄金期を一転極悪ヒールとして支えることになる飯塚と、まさかの大増量からメジャータイトル総ナメして「プロレス界の帝王」に君臨する高山。一番変わる2人ではないでしょうか。ただこれはちょっと噛み合ってないような試合。まあ対抗戦としての盛り上げ方を前の2試合がけっこう出してしまっていて、高山のヒザ蹴りに飯塚の投げってのも、なんかもう見たやつって空気があるような気がします。内容で見ると「この試合必要?」って思ってしまいますが、後の2人の活躍を考えると、あってよかったこの試合。
第4試合 ●獣神サンダー・ライガー(猛虎原爆固め 10:14)佐野友飛○
一番プロレス寄りかな?という佐野と数年前ライバル関係だったライガーのジュニア対決。佐野は後にホイラー・グレイシーと戦ったりPRIDE初期にMMAやっていきますが、この人プロレスがやっぱりいいですね。プロレスならではの奇襲攻撃をここで出してきたライガー。卍固めやコブラツイストで攻めて、なんと場外に放り出しプランチャ。かわした佐野がなんとトペスイシーダ!大歓声。ここに来てU戦士に「プロレスを思い出させる」という新たな展開とドラマが。この時2人の歴史見てた人は泣いたんちゃうかなと思うぐらい。新日ジュニアらしい良い試合でした。
第5試合 ○長州力(サソリ固め 4:45)安生洋二●
当時Uインターの中でも一番「噛みつく」選手の安生とレジェンド現役長州力っていうカードは素晴らしい。この時一番昭和のプロレスを体現できる長州はやっぱり長州で、安生の攻撃に微動だにせず長州プロレスで圧倒的に潰しにいくという、後に大仁田とやった時みたいな、圧倒的な勝ちプロレス。これが長州ができる唯一のプロレスであり最大の魅力というのがよくわかりました。ちなみに「キレちゃいないよ」はこの試合後インタビューで出た言葉です。
第6試合 ●佐々木健介(膝十字固め 9:13)垣原賢人○
本当は蝶野の試合も組まれてたけどなくなったみたいです。長州を前にしてこの三銃士+健介の試合を最後に持ってきてるのがまたいいですね。当時すでにスタイル出来上がってた健介と、後に完全プロレスラーになり現在病気療養中のカッキーこと垣原。ほかの選手に比べると感情あんまり出す方じゃない2人で、この順番ということもあってお互いどんな展開作るんかな?と思って見ると速攻のストラングルホールドと最後のビクトル膝十字で意外な決着という、これもまたなかなか驚きの試合でした。
第7試合 ○橋本真也(三角絞め 7:20)中野龍雄●
前哨戦で永田からタップを取ってて渋い実力者イメージの中野に、三銃士では一番異種格闘技思考の橋本。納得のセミファイナル。序盤は今までの序盤と同じようにUスタイルに付き合うかのようなグラップリング展開、ただそれでは橋本らしくなく、解説の猪木もそれを言い出した頃に橋本が一気に豪快なチョップ、キック!この会場のフラストレーションをあえて溜めて爆発させる空気の読み方とタイミングが橋本はいいんですかね。
第8試合 IWGPヘビー級選手権 ○武藤敬司(足4の字固め 16:16)高田延彦●
さてメイン。この年に初めてのIWGP戴冠とG1制覇で完全に新日本の顔になってた武藤がタイトルを超えた偉業を達成した試合。これ以降プロレスをさらに極め業界を盛り上げていく武藤、ヒクソン・グレイシーと戦いPRIDE発足してMMA業界を盛り上げていく高田。昨日は大晦日から始まる新しい格闘技興行RIZINの統括本部長として挨拶してました。
ここまで出てる新日本勢の中でもライガーに次いで格闘技色が薄い華やかなプロレスラーである武藤がどう戦うのかという意味でも今までの7試合でも見れなかった未知の世界を期待して、さらにIWGPも賭けてということで最高潮に盛り上がって始まった試合。なかなか見ごたえあるグラウンドの攻防にどよめきつつも、いきなりの頭突きとストンピング、ローリングソバットをきっかけに火をつけて蹴り合い。さらにジャーマン、バックドロップからなんとムーンサルト!それをかわされて自爆する武藤に対して「いつものプロレスで戦ってる!」という感動を感じる一方「もう打つ手がないのでは?」という不安。おそらく新日ファンが不安を感じ始めたところに追い打ちされる高田の強烈なキック!必殺の腕十字!追い詰められピンチの武藤が高田の蹴り足を取ってドラゴンスクリュー!この時の歓声すごかった。そこに足四の字固め!今まで繋ぎで使われてた2つの技で高田が苦しんでいる!一回逃げられるも、再度極めて決着をつけました。歴史に残る名シーン。
この大きな対抗戦に乗っかって、足四の字固めというプロレスでしかできない、プロレスを代表する古典的な技を、歴史を動かす超必殺技として蘇らせた瞬間でした。
この対抗戦は戦前と戦後ちょっとの期間は盛り上がり、翌年1月高田が武藤からIWGPと獲り、5月に橋本に負けて、そのへんで徐々に終わっていった感じがあります。1年もなかったってことかな?これもMMA確立前でプロレス最強説が残る曖昧な時代だからこそハネた、時代に合った抗争だったと思います。