最悪の試合 青木真也 vs. 長島☆自演乙☆雄一郎

好きな格闘家のひとり、青木真也。
格闘技見る人のおそらく多くの人達から見たこの人のイメージがガラっと変わってしまったのがこの試合。

「弱い」「男らしくない」「逃げ回る」「ざまあ」「脱糞」・・・
現在の青木真也がこんな好き勝手ボロクソ言われるのが本当に納得できない、鬱陶しいという思いが何年もあります。その理由を記憶と記録を元に。

2010年4月 ギルバート・メレンデス戦
UFC fight pass Gilbert Melendez vs Shinya Aoki Strikeforce: Nashville
当時日本のMMA団体のトップDREAMでライト級王者だった青木が、世界でUFCに次ぐMMAプロモーションStrikeForceのライト級王者ギルバート・メレンデスとアメリカのナッシュビルで対戦。UFCは独占契約でスポット参戦は基本的にないので、DREAM所属のまま世界のトップといえる相手に挑戦するという形では最高のシチュエーションでした。間違いなくDREAMファン、日本のMMAファンの気持ちを背負った試合。しかし初めての金網での試合で完全Awayの中、超一流ストライカーであるメレンデスからテイクダウンを取れず打撃を受けて判定で完敗。



「このままじゃだめだ。このままじゃ井の中の蛙で終わる」と終始悔しさを出し泣き続ける青木からは、本気で日本の格闘技界をトップに持っていきたい、業界を代表して戦争のつもりで挑戦していたという気持ちが伝わりました。見てるこっちも悔しくて悔しくて。

大晦日にメレンデスとの再戦が浮上
メレンデス戦の後、ライト級王座の防衛戦で川尻達也を倒し日本最強としての地位を確立。さらにマーカス・アウレリオを圧倒して完全に再起。
そして、ギルバート・メレンデスとの日本での再戦という話が浮上し、ほぼ決定というところまでの報道がありましたが・・・

2010年11月06日スコット・コーカーがDynamite!!のメレンデス vs. 青木再戦の消滅を示唆(MMA IRONMAN)
スコット・コーカーがコメント。
・「Dynamite!!でギルバート・メレンデス vs. 青木真也の再戦は実現しそうにない。そのことは来週あたりにハッキリするだろう。試合が行われるかは私には分からない。行われなかった場合、ギルバートにはストライクフォースで闘ってもらう」
・「理由は未払い問題だ。我々は常にその噂を聞いている。だが、我々は自分たちが送り込んだファイターが支払われたかどうかで判断するしかない」

なんとこういう話でなくなるという流れに。スコット・コーカーによるとこれはDREAM自体のファイトマネー未払いの悪い噂が影響しているという。ひどい話。
さらに・・・

2010年11月24日青木真也がメレンデス戦消滅を示唆/マッハがアメリカ修行 etc.(MMA IRONMAN)
俺の試合はどうなるんだ。
この扱いは正直酷すぎる
俺だって全部放り出して勝負してみたい気持ちにならない訳じゃない。
あの選手との試合はなし。しょうがないから出来る中でのベストの選手を呼んで欲しい。

青木があのメレンデスとの再戦にどれだけ賭けていたか、どれだけ再戦したかったか、あの試合後の悔しい顔や言動を見てるとこの辛さもひしひしと感じる文面。
そして大晦日Dynamite!!特有のバタバタ決定でなんと、長島☆自演乙☆雄一郎とのMIXルール戦が発表されました。1Rは立ち技、2RはMMAというあのおなじみ意味わからんルール。
記者会見では速攻でバウトレビューの記者がメレンデス戦消滅の話を振るぐらい(16分30秒ぐらい)、決定寸前まで来てたことがわかります。

長島☆自演乙☆雄一郎とのMIXルール戦
いざ始まった試合。
青木真也自身がこの試合にどれだけ乗り気で、どんな感じでルールを承諾したのかわかりませんが、まずどう考えてもグラップリング重視でそれを主軸に試合をしてきた青木に、1Rといえどキックボクシングルールをやらせる意味がわかりません。今までもそのスタイルでやってきたと思うし、特にこの年は4月のメレンデス戦からストライカーにいかに組みで対抗して勝利を狙うかを練習してきて再戦にも備えていたはずの青木に、逆に打撃だけでやれっていう。残酷すぎへん!?

当の青木は長島のパンチをよく見てかわし組みつき首相撲からヒザ蹴りを入れたり、できうるキックルールでの攻撃を繰り出していくんですが、また組みにうるさいK-1の悪いムードからか組みはすぐ外され、逆に長島の速いパンチを受けるようになり、流石に合わされ始めたらヤバイと思ったのか、跳び技でのかけ逃げと組み逃げで時間を稼ぐ青木。これにテレビ実況陣や解説の魔娑斗が卑怯だの男らしくないだの好き放題言います。いやいやいや、青木の立場に立ってみてよ。魔娑斗がブアカーオ対策積みまくって勝つことに燃えてた頃にいきなりカード変わってグレイシーとグラップリングマッチ組まれたらどうするの?って。
PRIDEなくなって暗くなってた日本のMMAをまた世界で一番輝かせるために、世界に強さを証明するために代表して戦いに行った青木が、3分逃げただけでなんでここでブーイング受けてるの?自分はものすごいイライラしながら、たぶん青木本人も「あとちょっとでこの意味不明の時間は終わる。あとちょっと我慢すれば」と思ってたはず。

そしてやっと終わった、誰の得にもならない苦痛の時間。あとはさっさと終わらせて、2011年に向けて新たな挑戦を模索していくだけ、と。
しかし違いました。2R始まってすぐタックルに行った青木の顔面に狙いすました長島の飛び膝がクリーンヒット。まさかの一撃で沸き上がる会場。コーナーに駆け上がる長島。倒れたままの青木。打たれ強いイメージのなかった青木には常にこういう絵が浮かんでましたが、まさか。

角田信朗がブログで書いてましたが、長島が1Rに膝蹴りを一度も出していないことから、膝蹴りのイメージを消しておいて2Rのタックルに備えるという見事な作戦だったんじゃないかというのがすごい納得。これを実行した長島はそれはそれですごいんですが、それよりこの特殊なルールをおそらく嫌々受けた結果こうなってしまった青木の不運と、原因を作ったDREAM、何も理解せず批判する実況解説にイライラするだけの、この年一番胸糞悪い試合になりました。

ある意味格闘技ファンに対して「ひねくれて」しまったように見える青木真也という人ですが、自分は常にギラギラして本当にキッチリ勝つ強さを求めて戦うかっこよすぎる勝負師の姿を忘れないでおこうと思います。