リョート・マチダ

6年前、「猪木の秘蔵っ子」としてある日系ブラジル人が格闘技雑誌で紹介されてました。

昔からPRIDEとか日本の格闘技界にチョコチョコ顔を出しては怪しい外人選手を連れて来てデビューさせていた猪木。このブラジル人もその一人でした。それがブラジルに伝わる空手をベースに戦うリョート・マチダ。

そしてその選手は猪木のプッシュがありながらも戦い方が地味なのでデビュー自体もそのあとの数試合も話題になりません。日本がPRIDEとK-1を筆頭に格闘技ブームだった頃です。大晦日の「猪木ボンバイエ」ではアメリカ最大の総合格闘技団体UFCのリッチ・フランクリンという選手をKOしました。それまでアメリカでデビュー以来無敗の快進撃を続けていたフランクリンを倒したのは、それはもう驚きでした。しかしそれでも日本では人気が出ません。ルックスも戦い方も入場もコメントも地味なのです。ミルコやヒョードル、ノゲイラにシウバといった人気選手がガンガン試合をしていた頃なので、リョートは相変わらず話題になっていませんでした。

そこでリョートは日本以外のアメリカやブラジルで試合を重ねます。それはそれは目立つことなく地味に実績を上げていきます。安定した戦いぶりで、気がつけばデビュー以来8戦全勝。

そしてリョートがアメリカ最大の団体UFCに出場することになりました。それが2007年、日本ではPRIDEがフジテレビに契約を切られUFCに買収され、K-1では地味な王者シュルトが君臨するというファンにとって盛り上がれない展開が続いて格闘技人気が完全に下火になっていました。

いざUFCでの戦いが始まり、レベルの高い選手相手にリョートは勝ち続けました。しかし地味な試合、判定での3連勝ということでアメリカでも人気が出ず、「試合がおもしろくない」とさんざん言われます。

でもリョートは戦い方を変えません。それは、同じ空手家の父親から教えられた伝統的な空手のスタイルでした。リョートはそのスタイルで頂点を目指しました。

そして、いよいよUFCで元世界王者ティト・オーティズとの試合が決まりました。ティトはUFCで一時代を築いた超人気カリスマ選手です。ティトを相手にリョートは鋭いヒザ蹴りで強烈なダウンを奪って見せました。判定になったものの熱い試合でした。

次はリョートと同じくUFCで無敗の快進撃を続けていたチアゴ・シウバという選手です。正式決定ではないものの、次期世界王座への挑戦者決定戦になるのではないかと噂されました。つまりリョートが熱くいい試合をすれば王座挑戦のチャンスはあるということです。

予想ではリョートがチアゴの良さを消して地味な判定勝利という声が圧倒的でした。しかしリョートは空手スタイルの鋭いパンチとキックで攻めたてて、最後は圧倒的な強さでチアゴをKOしました。その試合はその日の大会ベストKO賞に選ばれました。

長い年月をかけ、鳴り物入りでデビューして全勝にもかかわらず、どこからも注目されなかった悲運の空手家が、やっとのことでUFCライトヘビー級王座に挑戦することになりました。それが2009年5月23日。UFCは世界的に爆発的人気で、史上最高にレベルが高いと言える状況です。つまり正真正銘、ライトヘビー級の世界一に挑むという意味です。

チャンピオンがラシャド・エヴァンス。この選手もなんと18戦無敗。最強の王者と最強の挑戦者の試合です。

リョートは勝ちました。相手の得意なパンチの打ち合いを自ら挑んで完全に失神させて、場内を熱狂の渦に巻き込みました。場内には「マチダ」コールが鳴り響きます。

実況は「Welcome to Machida era!!!(マチダの時代にようこそ!)」と言い、会場が、生中継を見ている世界中の人々がリョートの世界王座奪取を祝いました。

試合後のインタビューでリョートは、「やっとここまで来れた。長い間王者でいたい。そして会場の皆さんに言いたい。夢を持ってるならずっと持ち続けろ。いつかそれが叶うから。今日俺がそれをやってみせた。みんなにもできる。」とメッセージ。UFCでアジア系の選手が王者になるのは史上初です。

「KARATE is Back !!!」
デビュー以来批判されてきた父親の空手で世界一になったリョートは心の底からそう叫びました。

これでリョートは15戦全勝、同じUFCライトヘビー級には日本でも有名なヴァンダレイ・シウバやクイントン・ランペイジ・ジャクソン、マウリシオ・ショーグンにダン・ヘンダーソン、かつて戦ったリッチ・フランクリンなど強豪がひしめいています。これらを相手に、空手スタイルで「リョート・マチダ時代」を築くことができるでしょうか。

2件のコメント

  1. おぉ!リョート・マチダがついに王者ですか!地味に勝ち続けてたのは知っていたのですが・・・・。強豪相手に何度防衛できるか楽しみですね!!

  2. どうもーいらっしゃい。
    次はランペイジ戦になりそうですよ。
    まだ、どうやったら勝てるのかわからない状況なので幻想広がりますねえ

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