異種格闘技戦 グレート・ムタ vs 小川直也

1997年8月10日新日本プロレスinナゴヤドーム
異種格闘技戦 小川直也 vs グレート・ムタ

これぞグレート・ムタ!心に残る超名勝負です。

当時の新日本プロレスで大きく盛り上がっていたのが柔道の小川直也参戦と、アメリカWCWからの流れで蝶野正洋をリーダーとしたnWo JAPANの勢い。小川は橋本真也との抗争を終えてアントニオ猪木に従い本格的に格闘技路線で参戦で勢いに乗ってるところ。グレート・ムタは武藤がUWFインターとの抗争を終えてムタとして復活、伝説の新崎人生戦を経てのびのび試合してさらにnWo参戦でまさに全盛期。後に業界に大きな影響を与えた2人の初顔合わせがこの時(と思う)。

また武藤敬司としても異種格闘技戦は96年に何故やったのかいまいちわからないペドロ・オタービオ戦1回のみ(オタービオはPRIDE参戦のきっかけになったやろうし、モノマネが学校で流行ったぐらい)で、ムタとしての格闘技戦は予想してなかったし2人が絡む理由も特になかったけど今思うとナゴヤドーム初進出の目玉としてすごい良かったと思います。一応試合後nWo勧誘は軽くしてましたがそれ以降何もなかったので愛想誘い。

最初の田中リングアナの「柔よく毒を制す」は名フレーズ!ムタ入場の演出忍者のカメラへのケブラータ事故はまさかですね。
とりあえずこの試合は特別レフェリーの猪木ってポジションから空気が異様。nWo仕様のムタは特にかっこいい。新崎人生戦みたいな邪悪なジャパニーズヒールとテンポいいアメリカンヒールのちょうど中間というか良いとこ融合というか。それに対して主役であるべき小川が猪木とムタとセコンド蝶野に飲まれて存在感がなくなってしまってるように見えます。この時の小川は柔道の実績と橋本戦の記憶を思い出しその凄みを頭の中で投入してこっちが勝手に成立させてるキャラであり、ほかの3人は自らその空気を発してわからせて試合を作る、こうやって始めるんやという完全なプロレス力の違いが試合前にしてよくわかりました。

プロレスの技で本人の主張やメッセージが見えるのが良い試合の要素のひとつやと思うんですが、この時のムタは特にすごい。最初の猪木への毒霧でもう「用意されたルールには従わない」ってことで、、、小川の猛攻から始まるものの、会場の注目はムタの反応と反撃。そしたら早速小川の黒帯を外して絞めるという古典的なプロレス反則技。そこに辻よしなり「いけないことをやっているー!」っていう格闘技色に反するプロレス色の主張をシンプルに伝えてるこれも名フレーズ。

さらにムタが出した背負い投げで、武藤敬司としてのバックボーンの柔道を見せて、逆に次にルチャ系の巻き投げを出すことでプロレスの投げも見せる。小川の反撃払い腰から場外に逃げる大きな動きも大会場に映えます。そして三角絞めへの毒霧!もうね、これ見たらUFCでホイス・グレイシーにも毒霧するんじゃないかって、そういう夢を想像させてくれます。最後はフラッシングエルボーから腕十字・・・ムーンサルトを出さなかったのも、腕十字で指も折って反則技にしたのも、よりヒールらしさを見せつけたかったのかなと思います。武藤敬司としての高田延彦戦でローリングソバットやムーンサルトと王道技の足四の字を出したあの時との違いが綺麗に出てます。

この1997年にPRIDE.1開催で高田がヒクソン・グレイシーに敗れて日本の総合格闘技ブームが始まるわけですが、その2ヶ月前に見せたグレート・ムタならではのプロレスの主張がこの試合なのかなと今思います。