クエンティン・タランティーノ監督「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を見ました!
公開2日目の朝からIMAXで!空いてたけど!
ネタバレを盛大に含みます。

公開まで
この夏にタランティーノの新作があると聞いてからずっと楽しみでした。前作「ヘイトフル・エイト」もその前の「ジャンゴ」もその前の「イングロリアスバスターズ」も何回も見ました。事前にあまり予告見たくはないんですが、最近「午前十時の映画祭」でしょっちゅう映画館行ってるので毎回流れててこの予告は見ました。正直これでは時代設定はわかるけどどういう話が想像できませんでしたが・・

シャロン・テート事件
結果的にこの映画はちょっと予習するべき映画だったんですが、それも知らず単純に楽しみで先に調べたことが、映画に出てくる実在した女優シャロン・テート。実在の人物の予習しとこうのつもりでwikiを見たら驚きの事件をそこで知りました。「シャロン・テート殺人事件」、これについての詳細を見るとかなり残酷で切なく腹立たしい事件。ロマン・ポランスキー監督と結婚、ハリウッドでこれからどんどん活躍していくはずの26歳の女優が理不尽な殺され方をした悲劇の影響を想像すると「これがテーマの映画か・・」と若干気が重くなりました。ただ、ポランスキーのwikiにはこの日の家でのパーティーにはスティーブ・マックイーンやブルース・リーも呼ばれてたけど行かなかったと書いてます。ブルース・リーがいたら・・・とか思ってしまいますね。

いきなりの豪華共演
映画はまず1969年より数年前?に西部劇のTVシリーズ番組で活躍したらしいリック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)の作品が流れ、その専属スタントマンであるクリフ・ブース(ブラッド・ピット)と共にTVでインタビューを受ける様子から始まります。そしてその2人を呼び出して現れたのがイタリア映画のプロデューサーであるマーヴィン・シュワーズ(アル・パチーノ)です。いきなりのアル・パチーノ、ディカプリオ、ブラピの3人が同じ絵に!なんか久々に見たアル・パチーノが行きつけであろう店に入ってすぐ店員に「ジーナ、ジーナ、ジーナ〜♪」と調子良さげに言うところで「ああ、アル・パチーノだ〜」って。

リックとクリフの現状
マーヴィンに俳優としての現状をグサグサと指摘されてキャリア落ち目を実感して泣き出すリックと、慰めるクリフ。ここから2人の会話や周りからの扱いによって2人の現状がだんだんとわかってきます。この映画の中でのストーリーと言えるものは、このリックとクリフの仕事での浮き沈みが中心かと思います。後にクリフも過去色々あって仕事がない状況で、ほとんどリックの付き人のように車で送り迎えや家の用事をしている相棒ということもわかります。セリフひとつひとつで徐々にわかってくる感じ。

不安を抱えながらも必死に生きるリック
そしてリックは明日の撮影に向けてセリフ練習。酒を飲みながら。一時代を築いて優雅な暮らしをしているものの、仕事には不安が付きまとい酒に溺れ、二日酔いで大事な撮影に臨んでしまいます。西部劇で監督に求められる新しいリック・ダルトン像、自分のことを知らないこれから輝かしい未来が待ってるであろう子役のトルーディ(ジュリア・バターズ)とのやりとり、主役は役者としての後輩。そこでの大失敗から気合い入れ直しての迫真の演技で周囲を驚かせ自信を取り戻すリック。細かな表情やセリフや仕草ひとつひとつに感動できる、感情の起伏激しいこのリックをこれだけ表現できるディカプリオはやっぱりすごい!ってなります。

クリフの過去
結果一番謎が多い存在になるクリフ、彼自身は自分のことをあんまり話すタイプではなく、いろんな人が言う本当かどうかわからない話も含めて過去に色々あった人物ということがわかります。リックが「彼は戦争の英雄だぞ」と言うことから、戦争帰りのスタントマン。パンフレットのタランティーノのインタビューによると実際そんなスタントマンはいたそうです。だからこの時代のスタントマンはその気になれば人を殺せる技術と精神を持った人が多かったとか。そう思うとこのクリフの雰囲気はぴったり。あとリックは「噂だ」と言う「女房殺し」の異名。直接言われても否定しなかったクリフ、かばうリック。ここにはクリフがあれだけリックのために働く理由も隠れてるのかも。この映画ではタランティーノはディカプリオとブラピに、このリックとクリフについてのストーリーやセリフに直接関係のない設定や歴史についてもしっかり作って話したらしいです。それによってこの2人のキャラクターの仕上がり具合が表現できたのかな?

女優シャロン・テート
新進気鋭の女優シャロン・テート(マーゴット・ロビー)は夫であるロマン・ポランスキー監督と帰国して家に帰るところから登場、空港に出迎えるカメラマンの数や振る舞いからいかにも現役のスターという感じ。ドライブ、パーティー、家でも夫と友達と常に楽しそうにする姿が描かれます。特にこの、自分の映画を上映してる映画館に入り、他の観客のリアクションを見ながら楽しむシーンはシャロン自身が演じることと映画というものを愛していたということがよくわかります。
シャロンに関してはずっと幸せそうに過ごす様子を見ることになります。ただただ日常を過ごすシャロンの姿を見てると、実在したシャロンもこうやってこの時代の1日1日を幸せに過ごしていたのかと思えてきます。そして同時にこの後起こる実際の事件を想像すると怖く悲しくなる、不思議な感覚で眺める時間。しかし進んでしまう時間、運命の1969年8月9日に近づく緊張感。

様々な「映画への愛」
登場人物皆がいろんな形で映画への愛を表現しています。最初に映画というかリックの西部劇のことですが、マーヴィンがリックと会う前日に家でコニャックを飲みながらリックの作品を2本見て、起きて朝にまた別のを見て来たという話。そしてそのリックが自分のこだわりを持ちながら現実と向き合ってなんとか映画と演技に食らいついていく姿。自分の作品を嬉しそうに映画館で見るシャロン。リックと共演した子役トルーディが「セットでは役名で呼んで」「食事をすると集中力がなくなる」「俳優として100%を出す努力をする」と、8歳とは思えない俳優としてのプロ意識の高さを見せる姿。どれかのレビュー動画で言われてましたが、若き日のジョディ・フォスターがこんな感じだったとか?そしてまた何より全体的にタランティーノ自身の映画愛が詰まりまくりです。

マンソン・ファミリー
クリフが出会ったヒッピーの少女プッシーキャット(マーガレット・クアリー)を家だということで送った、かつて撮影で使われていたスパーン牧場。そこに住み込むマンソンファミリー。チャーリーと呼ばれるリーダーを慕って集まる若者達、牧場オーナーである盲目のジョージ。このスパーン牧場と登場人物に関してはほとんど実在のものみたいです。ここに来た瞬間からの不気味な雰囲気が、明るく進んできた映画に暗雲。

歴史を変える
チャーリーの指示でスパーン牧場の4人が車でシャロンの家に向かうところで隣人であるリックに見つかり思いっきり罵られて引き返らされます。この後車内であの一番目やばい少女が「皆テレビ見て育ったよね?テレビは殺人のシーンばっかりだよね?じゃあ殺人を教えた奴を殺そう」と、往年の西部劇スターだったリックに狙いを変えて、シャロンの家ではなくリックの家に向かい、クリフと鉢合わせします。そして実際には3人組らしいんですが、このシーンは4人組。そして家に向かう途中で1人の女性が恐れをなして車で逃げて行きます。この女性は「似てるなー」とは思ったんですが、ユマ・サーマンの娘、マヤ・サーマン・ホーク!この、微妙に加えた設定の意味は?マンソン・ファミリー全員が悪いということではない、みたいなことかな?

映画界からの復讐
家に入ってきたマンソンファミリーの3人に対して、ラリってる状態のクリフと愛犬ブランディとリックの嫁がピンチになりながらも撃退するんですが、ブランディのえぐい噛みつき方、クリフがテックスを仕留める首折るような顔面ストンピング、赤毛の女へのしつこくえげつない顔面血みどろ叩きつけ。ここはもう実際のシャロンを映画界と映画ファンから奪ったマンソンファミリーへの恨みを爆発!という印象。そしてプールに飛び出した女へ、リックが映画の冒頭でマーヴィンと話してたナチスの人間を焼き殺す映画で使った火炎放射器を持ち出してファイヤー!この瞬間ガッツポーズでした。撮影で使った武器で殺すという意味でも映画界ならではの復讐。ここでも怪我しながら苦労して敵をほぼ倒したスタントマンのクリフに対して、最後のおいしいところを持っていくリックという関係性もそのまま当てはまります。

あるべきだった未来
マンソンファミリーを撃退して警察の調べも終えて、クリフは病院に運ばれ、嫁とブランディは休み、ホッとしたリックに、門越しに「何があった?」と声をかけるのはシャロンの家で集まっていたジェイ。リックは「ヒッピーが押し入ったけど大丈夫だ」と説明、そしてリック・ダルトンだと知っていたジェイは嬉しそうにリックの作品について話しかけて盛り上がる中、スピーカーから流れるシャロンの「ジェイ、何があったの?」の声、そして初めてリックとシャロンが会話。もう、シャロンが「みなさん無事なの?」って言うのを聞いて「いや、お前やー!」と泣き崩れそうな気持ちになりました。そして意味深なぐらい重厚に開く門を通り家に招かれたリックが、シャロンの家の庭で大きなお腹を抱えたシャロンと会うシーンで物語は終わります。この時に流れる曲が1984年の名作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」の曲にそっくりなんです。

リベンジ三部作
事実を変えてユダヤ人がナチスに復讐した「イングロリアスバスターズ」と、奴隷の黒人が白人に復讐した「ジャンゴ」と、今作の3つがいわゆる「リベンジファンタジー」三部作ということですが、それぞれでいう「ナチスによるユダヤ人迫害」や「黒人差別」というもの自体が”起きなかった”ことになっているという前作との違い。だから最初から最後までほぼ幸せな物語が続くので、何度も見やすいと思います。

シャロン・テートのイメージを変えた
タランティーノが言うにはこの時代の「象徴」だったシャロン・テートにもう一度命を与えて、当たり前の日常を過ごさせたかったとのこと。確かに自分もシャロンを調べたらすぐ出てきたのがあの「事件」でした。常にこの事件とセットで記憶されてしまった才能ある女優シャロン・テートのイメージが、この映画を見たことによってマーゴット・ロビーが演じる明るく笑顔で過ごす本来のシャロン・テートのイメージに変わりました。残酷な歴史の印象を映画で変えた!

ここまでのハッピーエンドは見たことない!

この予告でマーガレット・クアリーが言ってる「映画好きのための映画」ってのがよくわかります。

調べてたら当時のマンソンファミリーの1人で、映画の中でも「スネーク」と呼ばれ見張りをさせられてた女性が実在していて、この映画を見た後インタビューされた記事がありました。これはなかなか興味深いものでした。
【ネタバレ】元マンソン・ファミリーのメンバーが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を観た感想語る

最後に、この映画は何度も何度も考えて楽しいし、人の感想や意見や見方がほんまに広くて深くて面白いので、すげえなーと思ったレビュー動画を載せておきます。